第2話 横尾さんに倣って

横尾忠則さんが1980年に開かれたニューヨークでのピカソ展をみて「画家宣言」した話。確か展覧会を見終えてすぐに「自分はこれからは画家になる」と決めた、というのを数年前に読んで、以来ずっと頭のなかに貼りついていた。瞬時に決める感じ、選び取っていく感覚…その直観的なところ、潔さに衝撃を受け、また強くひかれた。作品も実物はほとんどみたことがなく、ファンというのもおこがましいが、不思議に横尾さんの書いたものに触れることが多く、かなり影響を受けてきた。それで、とうとう今年の8月に横尾さんに倣って「歌手宣言」をしたわけだ。

で、何があったかというとそれがミュージカルの「ビューティフル」。たまたまお盆のころに絵を描きながらFMをずっとかけていたら「きょうは1日ミュージカル三昧」のような番組をやっていて、ミュージカル好きというのではないが聞いてみることした。そのとき登場した平原綾香さんのスタジでオの「なまうた」と話を聞いてびっくり、すぐにチケットを予約。予想以上に素晴らしく、会場は全員がスタンディングオベーション。歌のパワーを痛感し、やっぱり人前で歌を歌いたいという自分の気持ちもはっきりした。

というものの、「歌手宣言」をHPのエッセイに書いたのは8月18日。ミュージカルを見たのは23日だから決め手はFM放送だ。22日には「そのうち一緒に音楽活動しよう!」と話していたピアニストの沢樹とも子さんに「11月の個展の時にコンサートデビューしよう!」とメールしている。その後はとんとん拍子に話が決まり、11月25日にめでたく「オトなバンドコンサート」を開催することになったというわけである。

「ビューティフル」のエピソードをもう一つ。ミュージカルの中で、キャロ・キングがおとなしいロングからカーリーに髪型を変え、それが彼女の転機となっていたが、実は私も7月26日にごくごく普通のショートからカーリーヘアに変えたばかり。思わず苦笑。今年は7月23日と8月22日、2回獅子座の新月があった年。月のパワーに突き動かされたように思える夏だった。

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