立ち止まってバラの香りを楽しむ

桜が終わればバラの季節だ。
見るだけでなく五感を満たす、という言葉がふと浮かんだ。
では、その五感とはなんだろう。
見る、嗅ぐはそのまま。
触れる、もバラを楽しむ大きな要素だ。
ひとつは棘。それから花びら。
たとえばナニワノイバラ。
一重咲きで、花びらは少し厚めのしっとりとした質感をもつ。
ピエール・ド・ロンサールなら
周りの大きな花弁の内側には数えきれないほどの柔らかな花弁が畳まれている。
枯れていくとき、ドライフラワーにしたときの触感にも滅びの美学がある。
味覚についていえば、バラのハチミツや花弁の入ったティーなど様々なものを楽しめる。
では聴覚は?
これは動物や植物とコミュニケーションできる人から聞いた話。
バラはとてもプライドが高いので、醜い姿は見られたくない、と思っているという。
丹精して育てて、固いつぼみからやがて花開く、そこまではいいけど、枯れるところは見ないでね。
そんな声に耳を傾けるなら、ドライフラワーの良さは味わえないが…。
五感すべてに関わってくるバラだけれど、本当の凄さはもっと深い心理的な面だろう。
タイトルの「立ち止まってバラの香りを楽しむ」という言葉は「人生を楽しむ」という意味でつかわれる。
私はこの言葉を、今朝開いた本の中で見つけた。
そして早速のバラの精油の瓶を取り出し、香りを嗅いだ。
2016年ブルガリア産のダマスクローズ。
こんなに素晴らしいものが手元にあったことにはっとした。
それこそが人生を楽しむことで、すべてはすでに持っているということ。
文学上でさまざまな形の「愛」を象徴するのがバラ。
でも本物のバラの香りは自分の胸の中に届く。
そして「まず自分を愛せ」ということを思い出させてくれるのだ。
それが生きることの原点、人生を楽しむ基本なのだ。
高価なバラ精油だが、その1滴はバラの花100個から作られる。
キャップをとって香りを嗅ぐだけでいいのだから、
ローズの製品(化粧品や香水など、本物も合成もいろいろ)ではなくて
ダマスクローズの精油を持ってほしいと思う。
1mlが20滴、バラの花2000個で4、5千円だろうか。
その効果は計り知れない。

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